先日、娘と海岸に散歩に行った続きをご紹介致します。
赤く染まり紅葉する植物のモモタマナに続き、赤く色づく実を持つ植物「ハスノハギリ」のことを少し書きますね。
この植物はとても可愛い実をつけます。
マスカット色の実をぶら下げ、海岸林を歩くと目を引くこの植物は沖縄では「提灯の木」、「下駄の木」なんて呼ばれたりもしています。

そして、この植物について調べていると面白い記事を発見しました。
(https://tmizu8812.blog.fc2.com/blog-entry-582.html)
司馬遼太郎「街道をゆく(沖縄・先島への道)」の石垣・竹富島での竹富島で、この木に関すると思われる記述です。
以下、少し長いですが、引用いたします。
密林の浜よりの縁辺で潮風をふせいでいる樹も、風変わりな木だった。
「学名は知りませんが、土地の子供などは提灯の木といいます。戦時中、履物がなくてこまっていたころはこの木で下駄を作りました。だからゲタの木ともいいます。また昔はこの木でお面を作りましたから、お面の木という人もいます。
オート三輪の運転手はそう言いつつ、砂を蹴って跳びあがった。実がなっているのを掴んで引きちぎったのである。実に小枝がついていた。なるほど提灯に似ており、須田さんがそれを受けとりつつ、
「いい実ですね」
と、感に堪えたような声を出した。地球の上にこういう木の実が存在しているとは、ちょっと想像できないようなカタチをしている。
実はピンポン玉大で、ピンポン玉のように硬質であり、膚質は蝋のようである。色はマスカット色で、実の実体は硬質の皮のみで中は空洞になっており、指で弾くとピンポン玉をはじいたのと同じ音と手応えがある。もっともまるっきりの空洞でなく、なかに黒くちっぽけな種子がはいっているのは、よく出来たマンガのような愛嬌がある。その小さな種子を、蝋質の硬い殻がまもっているのにちがいなく、そのマスカット色の球形の殻がピンポン玉とちがう点は、玉の底に直径1㎝ほどのまるい穴があいていることである。時期がくると、ちっぽけな種子はその穴を通って地上に落ちる仕組みになっているのであろう。
「これに、ホタルを入れるのです」
オート三輪の運転手がいった。ホタルを3びきも入れると相当あかるい。闇夜などに、子供が群れて浜を歩くとき、前をゆく子がこの「提灯」を頭上にかざしていれば、誘導をあやまることはないにちがいない。
とても面白い文ですね。
「街道をゆく」は昔ずっと読んでいた本ですが、すっかりこの文は忘ていました。
そして、いつかこの実の中に蛍を入れて暗闇の海岸を歩いてみたいです。
ですが、生憎この小笠原には蛍はいません。
いつか沖縄で見たいなと思っています。